墨東まち見世2009 レポート


日程:2009年9月1日(火)〜12月9日(水) 100日間
※コア期間 11月21日(土)〜12月6日(日)
場所:主に曳舟・京島・東向島・八広・押上エリア

まち見世

コア期間中に行われた大巻伸嗣さんのパフォーマンス《Memorial Rebirth》

2009年9月1日から12月9日の100日間に渡り、NPO法人向島学会と共催で、墨田区の東に広がる墨東エリア(曳舟・京島・東向島・八広・押上)のまちなかを舞台に様々なアートプロジェクトを展開する『墨東まち見世2009』を開催しました。

このエリアは、文豪、永井荷風を始めとする文人たちが古くより集い、多彩な文化を育んだ地域として知られています。杉田このみさんは、大正時代に向島に住んでいた俳人、富田木歩に焦点をあて映像作品《続・ふと木歩という名をおもう》を制作しました。一人の文豪の作品と生涯を取材し、朗読ドラマとして編集した現代の風景の中に俳句を織り込んだもので、当時の様子に思いをはせながら今この場所に生きることについて考えさせられる作品でした。

墨東まち見世2009

北川貴好《amplitude 鳩の街/光》


上映会場となった「アートスポット鳩や」は向島学会が2008年に運営を開始したスペースで、鳩の街通り商店街が古い空き物件を活用して取り組む「チャレンジスポット!鈴木荘」の一角(2階)にあります。こちらの1階では、墨東エリアに拠点を構えるアーティスト、北川貴好さんによる電球を組み合わせたインスタレーション作品《amplitude 鳩の街/光》も展示されました。

9月から地元を中心に使い古しの電球を集める呼びかけをして集まった数は約500個。当時の街のネオンの光を感じさせる電球や、今では見かけないメーカーの古びた電球などが連なり、直径120cmにも及ぶ球体となった作品は、各々の時代の記憶を想起させるようにゆっくりと点滅を繰り返し、通りを行く人の目を引きつけていました。

墨東エリアは現在、北川さんのようにアーティストが多く住むエリアになりつつあります。平岡直子さんと栗原汐里さんもまたこのエリアに惹かれ活動しているアーティストで、制作スタジオの「スタジオ・シェッラハル」を展示スペースとして公開していました。2人の作品に加え、小火(ボヤ)さん、池田みどり(池田晶紀+三田村光土里)さんの作品展示を古い民家の気配を活かしながら行いました。
墨東まち見世2009

昔ながらの長屋や路地など古くからの趣きを残すこのエリアは、商店街の活力にも注目です。スーパーマーケットや大型量販店の参入で衰退する商店街が多い中、京島のキラキラ橘商店街は、活き活きと商店が軒を連ねています。劇作家の岸井大輔さんは、会期100日間を通してこの商店街の空き店舗に《墨東まち見世ロビー》を構えました。このスペースでは、毎日のように何らかの展示やパフォーマンスが行われる一方で、平常時も商店街を訪れる近隣の方々と「墨東まち見世2009」の関係者やイベントを見に訪れた方々が交流する場となりました。また、ふとした瞬間に関係者の打合せがはじまったり、商店街の方とアーティストがコミュニケーションをとる姿を目撃することのできるこの場はアートプロジェクトの裏側を見せる劇空間でもありました。
墨東まち見世2009

食卓に並ぶごはんの缶詰を作成しているEAT&ART TAROさん


EAT&ART TAROさん、三宅航太郎さんらも、商店街やこのエリアに根付いた広域プロジェクトを行いました。TAROさんは、この賑やかな商店街の総菜や、街の食卓に並ぶ食事を缶詰にして残していく《向島缶詰アーカイブ》を展開しました。三宅さんは「おみくじ」と「食事」をかけあわせ、引いたくじがこの街のレストランや喫茶店と引き合わせてくれる作品《おしょくじ》を展開。この作品は、「墨東まち見世2009」開催が決まる前から、「アートスポット鳩や」を拠点とする向島学会のアーティスト・イン・レジデンスプログラムの一環としてはじまったものです。三宅さんがサポーターと共にこつこつとそれぞれのお店の方にお願いし集めたコメントはお店の雰囲気がうかがえる個性あるものばかりでした。
まち見世

コア期間には、大量のシャボン玉で幻想的な風景をつくりだす大巻伸嗣さんのパフォーマンス《Memorial Rebirth》など多数のプロジェクトを行うと共に、建築や食テーマにしたまち歩きイベント「墨東まち見世さんぽ」、関連トーク「地域密着型アートプロジェクトの可能性」を開催しました。トークではアーティスト、スタッフ、サポーターなど関係者が一堂に会し、ゲストには熊倉純子さん(東京藝術大学准教授)をお招きして、6時間に渡ってプロジェクトを振り返りながら、これからの活動について議論を重ねました。

今回は長期に渡るプロジェクトでしたが、岸井さんが「会期がが終わっても残るアートでありたい」と語るよう、継続して展示・展開される作品があったり、商店街のお店がアーティストとの交流に刺激を受けて看板に工夫を加えてみるなど、日々のくらしの中にちょっとした創造行為を見出すようになったなどの声も聞きました。また、様々な出来事が起こった「墨東まち見世ロビー」は、映画館「コミュニティシネマ・橘館」として運営が始まっています。プロジェクトは終わりましたが、今回拠点となったスポットは引き続き活動をしているのでこちらを中心に、墨東エリアを訪れてみてください。

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